コーヒー豆の焙煎とは?自家焙煎のやり方とプロが使う焙煎機について

コーヒーの風味や香りを決定付ける重要な工程である焙煎。焼き加減だけでなく温度の与え方1つで風味は大きく変わってしまいます。今回はそんな焙煎について基礎知識からプロの目線まで解説。また自家焙煎の方法も一緒にご紹介します。プロによる焙煎の方法、ご家庭でもできる自家焙煎の方法についてご紹介いたします。

焙煎(ロースト)とは?

焙煎(ロースト)とはコーヒーの原料である「生豆」にカロリー(熱と圧力)を加えていく工程を指します。 焙煎前の豆を「生豆」といいます。生豆は白く薄緑をしていて、このままでは飲用できません。焙煎を行うことで生豆に化学変化がおき、コーヒー豆独特の苦味や酸味が引き出されます。また焙煎時間やカロリーの加え方によって焙煎の深さ(焙煎深度)が決まります。加えて熱と圧力の加え方が変われば、完成したコーヒー豆の風味も変化します。同じ味を再現することが非常に難しいのも焙煎という工程の大きな特徴です。

焙煎深度と味の変化について

焙煎深度は、「浅煎り、中煎り、深煎り、極深煎り」の大きく4つに分類されています。さらに細かく8段階に分けられています。焙煎深度が浅ければ酸味が強く、深ければ苦味が強くなるのが特徴です。深く焙煎するには時間がかかります。浅煎りの場合は焙煎時間を短く仕上げることができます。しかし少ない時間でカロリーを豆全体に通さなければならないため、焙煎の難易度は高くなってしまいます。

ライトロースト

最も浅い焙煎深度。生豆の緑がまだうっすらと残っている印象も。カロリーをかけすぎないため、苦味が抑えられ、コーヒー豆本来の風味を感じられる焙煎深度といえます。均一に熱を通すことが難しく生焼けしてしまうことも。

シナモンロースト

香辛料のシナモンのようなキツネ色が特徴的な焙煎深度。豆の果実由来である柑橘系の風味特徴です。

ミディアムロースト

いわゆるアメリカンな味わいに分類されることが多い焙煎深度。中煎りに分類はされますが、豆の種類によっては浅煎りのような酸味が感じられることも。

ハイロースト

深煎り手前の焙煎深度。飲用されることが多く、一般的な深度といえるでしょう。

シティロースト

エスプレッソでもよく使われる焙煎深度です。焙煎工程の1つであるセカンドクラック(2ハゼ)が始まる頃にはこの焙煎深度にさしかかっています。

フルシティロースト

シティロースト同様にエスプレッソで使用されることが多い深度です。

フレンチロースト

いわゆる極深煎りという焙煎深度にも区別されます。アレンジコーヒーやアイスコーヒーでの使用に向いている焙煎深度です。

イタリアンロースト

最も深い焙煎深度であるイタリアンコーヒー。フレンチローストと同じくアイスコーヒーによく使われます。焙煎の際には焦がしてしまわないよう特に注意する必要があります。

自宅でできる自家焙煎の方法1 器具を準備する

1 生豆 適量でお好みの量を使用します。
2 手綱 手網にも種類によって違いが。今回は一般的な手網を使用します。
3 ガスコンロ IHコンロは使用できません。代替品として熱線が露出したハロゲンコンロは焙煎に使えます。
4 軍手 手を熱から守ります。高温を扱うことになるため、安全を考慮し着用しましょう。
5 タイマー 火をかけてから焙煎が終わるまでを計測するために使います。ファーストクラックやセカンドクラックまでの時間目安を知ることは味を再現する場合の指標になります。
6 スケール又は計量器 適量の豆を測るために使用します。焙煎後は豆が軽くなる傾向にあるため、逆算して適量の豆を使います。
7 軽量カップ/ザル 軽量するため、または豆を洗うために使用します。

器具を準備する上でのポイント

冷却するために「うちわ」か「ドライヤー」を用意しましょう。扇風機を使用するのはシルバースキンが舞うのでおすすめしません。

焙煎に慣れてきたらアルミホイルで手網を覆うことにも挑戦してみましょう。焙煎時間を短縮することができ、浅煎りの場合でも上手に焙煎できます。しかし目視で焙煎度合いを確認できなくなってしまうため、初心者の方にはおすすめできません。 ので適しています。

自宅でできる自家焙煎の方法2 実際に焙煎する

1 生豆の洗浄 焙煎に入る前に生豆の洗浄を行いましょう。特にナチュラル精選の場合はゴミが出ることも多いため洗浄することをおすすめします。
水で洗う際のコツは生豆を磨くように洗うことです。こうすることでホコリだけでなく、生豆についたシルバースキンを効率的に取ることができ、雑味を減らせます。洗うというより、「研ぐ」というイメージが重要です。
2 手網に豆を入れる 手網に適量の豆を入れます。焙煎に慣れてきたらアルミホイルをかぶせるのもおすすめです。より熱量が高まり、焙煎スピードを短縮することができます。浅煎りの渋みを抑えたい場合にも重宝するテクニックです。
3 火にかける 火の加減は基本的に手網の位置を調整します。火が強いと思えば高く、弱いと思えば低くすることで火力を調節していきます。また焙煎では基本的に中火かやや強めの火力で行うことを心がけましょう。火力が弱い場合、焙煎まで時間を要するため、豆の風味が損なわれてしまうことがあります。
4 ファーストクラック(ハゼ) ポップコーンが弾けるようにパチパチとはじける音がし始めます。火にかけてからファーストクラックまでは7~8分程が目安です。
5 セカンドクラック(2ハゼ) セカンドクラックでは豆がじわじわと破裂するため小さく鈍い音が鳴り始めます。ファーストクラックからセカンドクラックまでの目安はおおよそ2~3分です。ここからは深煎りの度合いを決める重要な工程。言い換えれば風味を決める工程といえるでしょう。
6 冷却 好みの焙煎深度に達したら火を止めて、一気に冷却を行います。ドライヤーやうちわを使い、乾燥冷却をしましょう。この工程は短い時間で冷やすことが重要です。冷却時間が長くなってしまうと焙煎が進んでしまい、想定よりも深めに仕上がりますので注意が必要です。
焙煎後にもう一度ハンドピックを行うのがおすすめ。焦げた豆や色付かなかった豆を取り除くことでコーヒーの風味が安定します。

番外編 本格的な自家焙煎を! さらに焙煎にこだわるなら

焙煎に適した生豆の選定

焙煎に使用する生豆は柔らかく、粒がそろっているものがおすすめです。生豆は堅く、もともと火が通りにくい農産物。そのため、初めての焙煎には火が通りやすいものを選定することがおすすめ。まずは柔らかい生豆や粒のそろった生豆を使ってみましょう。

こうした観点からいうとブラジル産は比較的に豆が柔らかく、焙煎に適しており初心者にはおすすめです。またコロンビア産のものは粒がそろっており、均一に火が通るので適しています。

生豆のハンドピック

規格に沿わない生豆を弾くことが目的であるハンドピック。焙煎前と後の2回行います。焙煎前に行うハンドピックについては洗浄の際に一緒に行ってしまうのがおすすめです。

初心者の場合は割れてしまっている豆や欠けた豆といった「異形豆」を中心に取り除いていきましょう。

もし、より本格的なハンドピックに挑戦したい場合は黒豆や虫食い豆、貝殻豆も探してみましょう。

手網を変えて家庭での自家焙煎に挑戦する

手網の種類によっても焙煎には大きな変化が現れます。ここでは手網の種類ごとの特徴を紹介します。「趣向を変えてみたい」という方はぜひ手綱の種類を変えて焙煎してみてください。

手煎りの材質別にみる焙煎への影響

セラミック製

セラミック製の手網は熱伝導率が低く、熱しやすく冷めやすいという特徴があります。そのためじっくりと焙煎することができ、中までしっかりと焙煎するのに適しています。しかし容器自体は急激な温度変化に弱く、耐久性に難があるので注意が必要です。

アルミ製

アルミ製の手網は熱伝導率の高さが特徴です。熱しやすく冷めやすいため早く火を通すことができ、外焼けに適しています。また軽量なため焙煎中に手が疲れづらいのも嬉しいところ。そしてアルミの場合は耐久性も高いため落としても壊れづらいです。

形状の違いは焙煎に影響するの?

一般的に角がある手網は均一に焙煎することが難しくなります。コーヒーの生豆が手網の中で転がりづらく、うまく撹拌できなくなってしまうためです。一方で丸みのある手網は中で生豆が良く転がるため、均一に熱が通ります。つまり丸みのあるもののほうが比較的焙煎しやすい手網という事ができます。

焙煎後の豆の取り扱いに気を付ける

焙煎を完成させた後もまだ注意することがあります。手間をかけて焙煎したコーヒー豆。せっかくなら美味しくいただきたいですよね。次に焙煎した豆の取り扱いについて解説していきます。

焙煎後の豆を保存する期間

焙煎後は煙の香りや豆の中のガスが残っているため味が落ち着くまでには時間がかかります。すぐに飲用しても美味しく召し上がることはできますが、焙煎をした豆は4~5日置いてから飲むのが一般的です。豆から粉にした場合にはもう少し早くガスが抜けるので、2~3日で味が落ち着きます。

最後まで美味しく味わうための保存法

焙煎後寝かしておく、または余ったコーヒー豆を保存する場合、どのように保存したらいいか悩むところ。一般的に焙煎したコーヒー豆を保存する場合には、温度・湿度・日光の少ない場所がおすすめです。一般家庭の場合は冷凍庫や野菜室が特に適しているでしょう。真空状態で保存できるタッパーや保存袋を併用することで、さらに良質な状態で保存可能です。

様々な焙煎方法を紹介!焙煎機を使った焙煎

家庭でも行える焙煎法、手綱式を紹介してきました。しかしコーヒーの焙煎には多くの種類が存在します。普段飲むコーヒーがどのように焙煎されているかを知ることで、よりコーヒーを飲むのが楽しくなるはず。ここではさまざまな焙煎を解説していきます。

直火型焙煎

文字通りコーヒー豆に直接火を当てる焙煎方法です。今回紹介した手綱式はこの焙煎方法の一種。火力の変化がコーヒー豆の風味に直結するのが大きな特徴です。手綱式の場合、圧力を加えることが難しいため浅煎りのコーヒー豆を仕上げるのは非常に難しくなります。

熱風式焙煎

シリンダー内に熱風を吹き込むことで焙煎する方法。熱風式は生産効率が高いため、大規模な焙煎業者でよく使用されます。熱源がシリンダーから離れており、熱風で焙煎深度を管理。均一な仕上がりになるのが特徴です。

半熱風式焙煎

熱風式と直火型のハイブリッドタイプです。コーヒー豆をドラム型の焙煎機に投入。それを回転させ熱風を送り込むことで豆を煎っていきます。熱風式との違いは熱源がドラムの近くに設置されていること。直火式とほぼ構造が変わらないため焼きムラは生じやすい焙煎方式といえます。

炭焼き焙煎

方式は直火型の一種である炭焼き焙煎。コーヒー豆に炭火焼のにおいはありません。じっくり焼くために遠赤外線を使用できるのも大きな特徴です。

【焙煎機を使った焙煎工程は詳しくはこちら】 深煎り・中煎り・浅煎りの違いとは?コーヒーの味わいやおすすめの飲み方

焙煎であなたしか知らない味を

ここまでコーヒー焙煎とそのコツについてご紹介してきました。しかしあくまでそれはコーヒー豆を一定品質に仕上げる方法にすぎません。焙煎の魅力は何といっても自分好みに豆をカスタマイズできること。色々な方法で様々な焙煎に挑戦し美味しいと感じたならば、それは成功なのです。今回の記事を参考に、ぜひオンリーワンのコーヒーを探求してみてください。

記事監修

林 稔 (はやし みのる)

  • ・営業二課 エリアコーチ
  • ・営業一課 エリアコーチ
  • ・SPチーム スーパーバイザー
  • ・CRAFT SHARE-ROASTERY 錠前屋珈琲 ローストマイスター
2010年から3年間にわたり、直営ショップを管轄する営業一課、二課でのエリアコーチを担当。直営現場のQSCH(現場力)向上に寄与する。 2013年からはSPチームに参画。SRS事業におけるSV業務を行う。コーヒーへの知識を活かし店舗改善・企画・販促提案により売上高増加に貢献。 2018年から現在まではCRAFT SHARE-ROASTERY 錠前屋珈琲コーヒーのローストマイスターとして活躍。多くの方にコーヒー焙煎の魅力を伝えている。